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小学校外国語活動の教科化への緊急提言 ―グローバル社会における国民の基礎教育として豊かな外国語活動を!

日本児童英語教育学会(JASTEC)第32回秋季研究大会 

201210月28

 

 

グローバル化が進む現代において、外国語教育の重要性が一段と高まっており、世界の 国々において外国語教育の改革・改善が進められている。文部科学省は平成 24 年度施策「グ ローバル人材育成推進のための初等中等教育の充実等」において、「国際的な産業競争の向 上や国と国の絆の強化を基盤として、グローバルな舞台に積極的に挑戦し活躍できる人材 の育成を図る必要がある」として、小中高を通じた英語コミュニケーション能力の育成が 重要課題であると指摘している。つまり、多言語・多文化化が進んでいる国内外の社会に おいて日本人が様々な文化を持つ人々と対話し、交渉し、協力し、共に生きる力を育てる ことが必要であり、国際共通語としての英語力の向上は不可欠である。

そのためには、世界の多くの国々と同様に小学校での外国語(英語)を必修教科とし、 小中高を通じて外国語教育を強化することが重要である。以下に、小学校外国語活動を必 修教科とすることの意義、到達目標、教育内容および教科化に伴う施策について提言する。

1. 小学校における外国語(英語)活動の必修教科化の意義と必要性

全人教育の場である小学校に外国語(英語)を必修教科として導入する価値は大きい。 児童の発達の中でも最も重要なもののひとつが言葉の発達であり、言語力は学ぶための力 であり、「生きる力」の根幹である。児童は授業や学校生活のあらゆる場面を通して,母 語の高度な言語運用能力を獲得していく。児童の言語能力が大きく変化するこのような時 期に外国語に触れることは、母語を相対化し、母語や外国語への気づきを活性化させ、思 考の道具としての言葉の力を高めるための有効な刺激となる。

さらに、この時期、児童は母語において、語彙や文法の発達に加え、相手との対人関係 や場面を推測する力、場面による適切な言語の使い方や談話を理解する力、さまざまな伝 達方略を用いる力を獲得してコミュニケーション能力を成長させていく。

外国語においても、このような言葉のコミュニケーション能力を育てることが肝要であ り、それは外国語を分析的な姿勢で学びがちになる段階以前に、直感的・全言語的アプロ ーチを通してこそ養える。あいまいさに耐える力などこの時期の児童の言語学習に対する 特性を効果的に利用しながら、外国語でのコミュニケーション能力の根幹となる力を育む ことは、児童の対人関係能力や認知面の成長にまで良い効果をもたらすと期待される。

低・中学年の児童は、母語や母語文化の文化心理的枠組みが形成されておらず、異言語 や異文化、及びそれを持つ人々に心が開いている。それゆえ、外国語教育を低・中学年で 行うことは、単なる言語学習に留まらず、互いの言語や文化を理解し、尊重しあう態度を

育んでいくことになる。近い将来、内なるグローバル化も急速に進み、多文化共生社会と なる日本で、異なる文化を持つ人たちと協調して暮らせるようになるため、小学校におけ る外国語教育は必須である。

小学校で外国語(英語)を必修教科とすることで、中学校以降の外国語(英語)教育と 教育内容を連携させることができる。小中高における一貫した外国語(英語)教育を計画、 実施することによって多文化が共存する国際社会に対応するために必要な異文化間コミュ ニケーション能力を育てることができる。

2. 小学校の教育課程における外国語科の位置づけ

多くの国々では外国語を必修教科として小学校第 1 学年、もしくは遅くとも第 3 学年か ら実施し、グローバル社会における持続可能な社会発展のため、これからの地域社会で求 められる人材に必要な異文化間コミュニケーション能力を育てている。

このような世界の小学校外国語教育の動向に鑑み、また小学校教育課程全般や教員養成な どの要件を考え、小学校第 3 学年からの実施を提案する。第 3、第 4 学年では週 1 時間とし、 現在行われている「外国語活動」を踏襲する形で、児童が英語や異文化に慣れ親しむこと、 第 5、第 6 学年では週 2 時間とし、言語スキルの獲得も含め、外国語(英語)によるコミュ ニケーション能力の基礎力を養うことを目標とする。なお、小中の外国語では英語を原則 とする。

3. 小学校外国語(英語)科の到達目標 小中高の外国語(英語)科の到達目標は、ヨーロッパの国々はもちろん、アジアの国々

でも日本と比べ非常に高く設定されている。これらの国々では、小学校外国語教育を異文 化理解とコミュニケーション能力の基礎づくりを目標に、低・中学年から必修教科として 実施しているからである。加速度的に進展するグローバル社会における日本の外国語教育 の改革・改善の第一歩は、小学校外国語活動を必修教科とし、高等学校修了時に期待され る外国語能力を見据えて小中高一貫の外国語(英語)科の到達目標を設定し、外国語教育 を展開することである。

第 3、第 4 学年では、週1時間、第 5、第 6 学年で週 2 時間学習する場合、第 6 学年修了 時の到達目標を、英語学習やコミュニケーションに対する態度、4 技能、国際理解および学 習方法の4つの観点について策定し、can-do リストの形で具体的に示すことが重要である。 以下に 4 技能の到達目標の概略を試案として示す。

「聞くこと」は、絵本、写真などを見ながら内容的にまとまりのある話を聞いて、大意 を理解したり、意味を推測することができる。「話すこと」は、身近な話題や自分のことに ついて、簡単な文や定型表現を用いて問答したり、考えや思いを伝えたりすることができ る。「読むこと」は、口頭で十分慣れ親しんだごく簡単な文や定型表現を把握したり、読む ことができる。「書くこと」は、初歩的な語句や口頭で十分慣れ親しんだごく簡単な文や定

型表現を書き写すことができる。 

4. 小学校外国語(英語)科の指導内容、指導方法および評価 指導内容は、児童の発達段階にふさわしい内容になるよう、児童の生活文化から抽出し

た題材シラバスとして、扱う言語材料は現在の中学校第 1 学年程度とする。また、それぞ れの題材について、「聞くこと」「話すこと」を中心に指導する。「読むこと」「書くこと」 については、アルファべットの文字と音に対する認識を高め、音声を通じて十分慣れ親し んだ基本的な文や表現を音読したり、書き写したりする程度とする。

指導方法は、「聞くこと」は児童が聞きたくなるような内容を意味のある文脈で与え、大 意を把握する、わからないことがあっても推測しようとする、量に慣れることなどを大切 にし、児童から言語や非言語で反応が自然に出てくるような活動を工夫する。「話すこと」 については、自分のたずねたいことをたずね、伝えたいことを伝える機会を多く与え、自 己表現、コミュニケーションの成功体験を味わわせる。文字指導については、児童の興味 やことばの学習における文字の役割に配慮し、「読むこと」は第 4 学年後半から、「書くこ と」は第 5 学年から段階的に導入する。

評価は、学習に主体的に取り組む態度、コミュニケーションに対する態度、知識・技能 の習得状況、知識・技能を活用する力を、授業中の活動の観察やパフォーマンス、ポート フォリオ等によって観点別に評価する。これらの評価にあたっては、児童の学習に対する 動機づけを図ったり、言語使用への自信を高めさせたりするとともに、振り返りなどの自 己評価等を活用し、自律した学習者の育成を図る。なお、各地域や各学校で国が作成する 4 技能の can-do リスト等を参考にし、地域や児童の実態にあった can-do リストを作成して 評価を行うことを考える。

5. 小学校外国語(英語)科教員の養成と研修 諸外国の小学校の外国語指導者は、専科教員もしくは担任である。指導者が担任の場合、

例えば韓国では、必修教科化にあたり、初等英語教育の理論と実践、英語の知識と技能に ついて日本の数倍の時間をかけた研修を計画的に実施した。その韓国でも、最近では専科 教員に移行しつつある。これは、小学校の外国語指導者には異文化や外国語について高度 な知識・技能や指導力が要求されるからである。

教育の成否は教員しだいである。我が国の小学校では専科教員と担任が協力して指導に あたる。そのために、各小学校に一人ずつでも専科教員を配置し、英語学習の全体的な計 画の作成や調整、担任が授業を行うにあたっての支援、ALT や特別非常勤講師等とともに、 担任とのティーム・ティーチング等にあたらせる。

また、教科化に向けて、本格的な教員養成や研修に早急に着手することが肝要である。 すなわち、すべての教員養成大学・学部の小学校課程に英語専修コースを設置し、専科教 員の養成を行うとともに、小学校教員免許の取得希望者全員に、初等英語科教育法および

初等英語科内容論等、計 4 単位を履修させる。また、小学校における外国語指導の難しさ を考え、初等英語科教育関連科目や英語運用能力を高める科目を選択科目として提供し、 履修を奨励することが重要である。

担任については、上記の小学校教員免許取得希望者と同程度の内容を研修し、英語の指 導力を身につける必要がある。ALT や特別非常勤講師等についても、小学生や小学校英語 教育の理解を深める研修が必要である。

なお、次期学習指導要領改訂において外国語(英語)を教科と位置づければ、教員養成 大学・学部で専科教員の養成を急いでもその数は大幅に不足する。従って、小学校教員や 民間から小学校英語教員に望まれる資質や能力があると認められた者に十分な研修を実施 し、専科教員として教員免許を取得できるよう、教育職員免許法等を改正する必要がある。 また、資質があり、かつ希望する中学校英語科教員には、一定の研修を実施した後、小学 校への配置を積極的に行う。

6. 教育予算および外国語教育予算
国家 100 年の計は教育にあり、教育に対する国家の姿勢は、GDP に対する教育予算の割

合がひとつの指標である。2009 年度の我が国の教育予算の対 GDP 比は 3.6%であり、OECD 加盟国の平均 5.4%と比べ非常に低く、加盟国中、3 年連続最下位である。また、我が国の 国家予算に占める教育予算の割合は、1975 年度は 12.4%、1995 年度は 8.2%、2011 年度は 6.0%と年々減少している。諸外国では、小学校に外国語専科教員の配置、小学校あるいは 中学校段階から第 2 外国語の必修化、外国語授業のクラスサイズの縮小、といったことか ら明らかなように、外国語教育に多額の予算を投じている。韓国では、英語教育推進のた めに、2008 年度から 2012 年度の 5 年間に 4 兆ウォン(日本円で約 4500 億円)を投入した。 一方、我が国のこの期間の英語教育予算は年間 10 億円にも届かず、2012 年度はわずか 1 億 4200 万円である。

教育予算は、日本および日本の子どもたちの未来への「中・長期的な大切な投資」であ る。世界の国々からこれ以上遅れをとらぬよう、我が国の外国語教育推進のために十分な 予算措置を講じるべきである。

原案作成者:「教科化および教科化に伴う施策」に関する JASTEC プロジェクトチーム 樋口忠彦(元近畿大学、関西チーム代表)、アレン玉井光江(青山学院大学、関東チーム代 表)、加賀田哲也(大阪教育大学、幹事)泉惠美子(京都教育大学)、太田洋(駒沢女子大 学)、衣笠知子(園田学園女子大学)、國方太司(大阪成蹊大学)、小泉仁(東京家政大学)、 立花千尋(近大姫路大学)、長沼君主(東京外国語大学)、箱風Y子(追手門学院大学)、本 田勝久(千葉大学) 協力者:加藤拓由(愛知県春日井市立神屋小学校)、冨藤賢治(大阪教育大学附属平野中学校)、 西田めぐみ(京都府南丹教育局)、森本敦子(奈良・帝塚山小学校)

 

 

  付記:本アピールは2012年10月28日、JASTEC役員総会において審議され、出席者のほぼ満場一致で承認されて、同日、第26回秋季研究大会・臨時総会において、出席会員全員の賛同を得て採択された。なお、賛同者は以下の通りである。

会長:國方太司、副会長:大城 賢、佐藤令子、事務局長:田邉義隆、理事: 阿部弘、アレン玉井光江、泉恵美子、植松茂男、加賀田哲也、金山敬、衣笠知子、川口康子、國本和恵、小泉清裕、小泉仁、後藤典彦、駒澤利継、酒井英樹、多田玲子、高橋一幸、福智佳代子、松岡博信、松原木乃実、矢次和代、渡辺一保、会計監査:大村吉弘、渡辺麻美子、運営委員:新井謙司、入江潤、梅本龍多、大橋園子、金澤直志、金澤延美、兼重昇、北村友美子、幸田明子、佐取美紀、塩澤正、杉浦宏昌、高田悦子、巽徹、佃繁、中上健二、長沼君主、中西浩一、新山美紀、西谷恵美子、箱崎雄子、幡井理恵、平松貴美子、平本哲嗣、樋田禎美、別府邦子、松宮奈賀子、三宅美鈴、箕浦永生、吉山京子、最高顧問:樋口忠彦、顧問:中山兼芳、伊藤克敏、五十嵐二郎、行廣泰三

 

配布先

文部科学大臣
文部科学副大臣
内閣官房副長官
文部科学省初等中等教育局長
文部科学省国際教育課長
文部科学省視学官
文部科学省教科調査官(中学校)
文部科学省教科調査官(小学校)
文部科学省教育再生実行会議 有識者
文部科学省中央教育審議会 委員
経団連会長
日本商工会議所会頭
東京都教育長
大阪府教育長
大阪市教育長

 

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